2009年5月30日土曜日

MOSAIC.WAVライブ

MOSAIC.WAVのライブに行ってきました。MOSAIC.WAVとはなんぞや。実は私もよく知りません。ジャンルで言うなら、テクノポップなんでしょうか。なんともすごかったです……。キーボードの(リーダー?)お兄さんが予想外の正しい美声だったのが非常に印象に残りました。

2009年5月25日月曜日

ブレゴビッチ "ALKOHOL"

クストリッツァ監督「ウェディング・ベルを鳴らせ!」を見て、サントラがほしくなって探していたら、ゴラン・ブレゴビッチの新作"ALKOHOL"を見つけました。実を言うと、このところジャンルを問わずあまり音楽を聴いていなくて、一時期は毎日ずーっと音楽を聴いていたけれど、波が去ったかな?と自分で思っていました。本も映画も音楽も好きだし、他にも好きなことがいろいろあって趣味が多い方だと思うのですが、やっぱりすべてにいつもアンテナをはっているわけではなくて、その時々で好みの波があります。それも年単位で。でも、どうやら、映画をきっかけに、音楽の波がじょじょに戻ってきたみたいです。バルカン・ミュージックからだったとは。
ゴラン・ブレゴビッチは、クストリッツァ監督「アンダーグラウンド」で知って、一時期とってもはまりました。ちょうど好きになった頃にゴラン・ブレゴビッチ・ウェディング・アンド・フューネラル・バンドを生で見ることができて、ブレゴビッチ自身のかっこよさにもはまりました。いやあ、すごい美男子なんですよ。声もいいし。キャリアの最初はロックバンドだったようですが、さもありなんって感じです。クストリッツァ以外の映画音楽も手掛けるようになったころから、どうも派手になりすぎた気がしてあまりチェックしなくなっていたのですが。
そのブレゴビッチのアルバムのタイトルが"ALKOHOL"(アルコール)。そう来たら、買わないわけにいかないですよね。まるで、お酒drivenの私のために作ってくれたみたいな(笑) あまり内容についてくわしくわからないのですが、ライブ録音中心で、古い曲もやっているので、完全な新作というよりはライブ盤のような性格のディスクなのかもしれません。ほどよくバルカンっぽく、ほどよくロックっぽく、ほどよくブレゴビッチっぽく、なかなか悪くない1枚でした。リーフレットに書かれた、父親にまつわるエピソードがちょっと泣ける話でした。だから、アルコールなのか……って。

Alkohol

2009年5月20日水曜日

クストリッツァ「ウェディング・ベルを鳴らせ!」

ウェディング・ベルを鳴らせ!」は東京を皮切りに全国で順次公開。詳しくは公式サイトで。

大好きなエミール・クストリッツァ監督の久しぶりの公開作に、期待にはちきれんばかりになりながら映画館に向かいました。えーと、しかしクストリッツァはとっても有名なんだけど、私が期待するほど有名ではないと思うので、本作の話の前に、少しクストリッツァ映画全般の話を。
クストリッツァはユーゴスラヴィア(現在はセルヴィア)出身の映画監督で、代表作はやっぱり「アンダーグラウンド」。本作の前に公開された長編映画は「ライフ・イズ・ミラクル」でした。このあたりの作品は第二次世界大戦以降のバルカンの歴史を斜めにぶったぎるような、力技の映画で、特に「アンダーグラウンド」は3時間近くをノン・ストップに走り抜ける感じがとんでもない名作です。えーと、クストリッツァ見たことない人は、とりあえずこれだけは見てほしいな。むかし、英国の映画評ではTragi-Comedy(悲喜劇)に分類されていましたが、確かに悲劇なのに思わず笑ってしまう、そして意識的に笑い飛ばしてしまうストーリーやエピソード、画面作りが、私には最高にぴったりくるのでした。
一方、クストリッツァには「黒猫白猫」という、これまた名作のコメディがあります。セルヴィアに住むロマ(ジプシー)たちを主人公にした、やっぱりとにかくエネルギー爆発の映画です。実は私が最初に見たクストリッツァ映画はこちらでした。とにかく素直に大笑いして楽しめるのだけれど、あとからちょっと深く考えてしまうようなところもあります。そこがまたいいんだなあ。
私はほとんどクストリッツァおたくなんですが、おたくとして見たところ(すなわち分析はしない)、クストリッツァ作品にはいくつか共通の要素があります。たとえば、浮遊(空を飛ぶ)のモチーフ。「ジプシーのとき」や「アンダーグラウンド」の花嫁、「アリゾナ・ドリーム」の魚や娘などが印象深いのですが、それぞれイメージも内包する意味も少しずつ異なるように思います。あ、「ライフ・イズ・ミラクル」のベッドも飛んでたなー。また、動物が大量に登場するのもクストリッツァらしさ。「黒猫白猫」には猫はもちろん、何でも食べる豚、アヒルの群れなどが登場。「ライフ・イズ・ミラクル」のロバも印象的でした。そしてもちろんクストリッツァ映画には音楽も欠かせません。「アンダーグラウンド」までは主にゴラン・ブレゴヴィッチが担当の東欧っぽい音が中心で、特にジプシー・ブラスの超高速演奏はもう最高。たいてい、映画の筋とあんまり関係ないのにブラスバンドのおじちゃんたちが画面にも登場して演奏しまくるのです。「黒猫白猫」以降になると、クストリッツァ本人も(一応?)参加しているノー・スモーキング・オーケストラが音楽を担当しています。やっぱりジプシーっぽさ、バルカンっぽさを持ちながらよりロックでポップになってるかな。息子のストリボール・クストリッツァがドラムをやることも。

というわけで、そんなクストリッツァ監督の「ウェディング・ベルを鳴らせ!」は、前評判からも「黒猫白猫」系の楽しい映画だと言われていましたが、確かにその通り。2時間半ほとんど笑いっぱなしで、またさらにクストリッツァ大好きになってしまいました。主人公ツァーネは田舎に祖父とふたりで住む少年で、嫁さがしに都会に出ます。彼が好きになった女の子ヤスナは街を仕切るマフィアに狙われていて…なんていう、とってもベタな設定に、とってもベタなストーリーが展開。そこになんとも"ヨーロッパの田舎"セルヴィアっぽいベタなギャグがいくつも詰め込まれていて……こんなベタベタな話、クストリッツァじゃなかったら作れないよーっていう(笑) いやああ、こればっかりですけど、ほんとに最高でした!
いろいろツボはあるのですが、基本的に見てもらってのお楽しみということで、語るのはガマンガマン。ほんの一言二言だけ……。まず、前述のクストリッツァ的要素=浮遊・動物・音楽はすべててんこもりでした。それにしても、本作に登場する動物たちは、なんというか、かわいそうに(笑) 獣○ネタって、どうもフランス-イタリア-バルカンに多いような気がするんですが、大陸ヨーロッパではけっこう一般的なんでしょうか(まさかね)。そして、音楽はストリボールが担当。これがほどよく抜けて現代的になっていて、ちょっと世代の違いを感じました。そしてかっこよかった。ストリボールは、実は俳優としても出演していて、鉄人兄弟の兄をやっていました。この鉄人兄弟が、私はとにかくもう大のお気に入り。ばかばかしすぎるー。頭まで筋肉でできていて、そして筋肉が鉄でできているとしか思えない。ああ、早くDVD出ないかなあ。そしたら鉄人兄弟の登場するところばっかり何度も見ちゃうのに……さらに、クストリッツァ作品の常連、ミキ・マノイロヴィッチがマフィアのボスで出てました。最後に、あの催眠うずまきはヒチコック「めまい」へのオマージュではないのか?とこっそり思っている私なのでした。ああ、好きなだけに語りすぎちゃったけど、まだ語り足りない……みなさん、ぜひ見てください……それから私と一緒に語ってください……。

アンダーグラウンド [DVD]
黒猫白猫 [DVD]
ライフ・イズ・ミラクル [DVD]

2009年5月19日火曜日

キング・コーン

原題 "King Corn" 2009.6月半ばまで、渋谷のイメージフォーラムで上映中です。

米国(そして世界)はとうもろこしで回っている!という事実をつきつけてくる映画でした。
ドキュメンタリーを撮る監督は、どんな勝算を持って作品を作り始めるのかな、と、いいドキュメンタリーを見るたびに思います。湿っぽいのが嫌いで食に興味がある私は、基本的に感動が予想されるような映画は見ません。あるテーマを扱うのであれば、きちんとそれぞれの立場からの話を並べてほしい。もちろん、選択や並べ方に監督の意思は反映されるわけだけれど、その無色に近い中からこちらが主体的に監督の主張を見つけ出せるような作りだと、いいドキュメンタリーだと思います。しかし、難しいんだろうな。
以前に食を扱ったドキュメンタリーとしてすごくよかったのは「モンドヴィーノ」という、ワインをめぐるドキュメンタリー。ワインのグローバリズム代表とも言えるロバート・パーカー/ミシェル・ロランやボルドーの有名シャトーの人々と、テロワール(地味)を大切にするドマ・ガサックのエメ・ギベールなどの人々を平行して追っていくのです。それぞれが自分は正しいことをやっているんだ、いいワインを造っているんだという自信を持って語っています。でも、見ているこちらからすると明らかに軍配はテロワリスト側にあがります。ああいう風に、自信ありげに墓穴を掘るようなことを言わせるインタビュー術(なのか、うまく拾い上げる構成力なのか)はすごいなーと思っておりました(これはほんとにおすすめなので、本題と離れるけど最後にリンクはっておきました)。

さて、今回の「キング・コーン」も、とうもろこしの生産・流通・消費をめぐるさまざまな立場の人々の声を見事に拾っています。そして、作られたとうもろこしがどうなっていくのかがよく見えます。グローバリズム経済の今日、アイオワ州で作られたとうもろこしが世界中に影響を与えるからくりがすごくよくわかる。……そして、ファーストフードとか安売りの肉や加工食品を食べる気が失せていきます。プログラムで監督曰く「世界で最も退屈なテーマであるとうもろこし」が、ここまでおもしろく考えさせる素材だったとは! これから日本各地でやるようなので、少しでも食に疑問や興味のある人にはぜひぜひおすすめです。

中でもいくつか特に印象的だったことを挙げておきます。
・まずは、アメリカの農業の規模の大きさと画一化。とうもろこし農家なら、一人で千エーカーは当たり前、他の人の農地も請け負って何千エーカーも、とうもろこしだけ栽培しています。自家用なんて作りません。ひたすら売り物だけ。機械化も進み、装置の幅が30mもあるトラクターで、耕運も化学肥料や除草剤お財の散布も種まきも一気に終わります。小山のような大機械でした。しかも、作るとうもろこしのほとんどは直接人間の口には入らない原料用のデントコーン(もちろん農薬耐性のある遺伝子組み換え作物)。映画を撮った当時より現在はバイオ燃料としての使用量が多いはずなので、さらに人の口から遠ざかっているんですよね。そんな風に作っていたら自分の作物に愛を感じられないのは当たり前という気もしました。
・作られたとうもろこしの行き先のひとつが、家畜の飼料です。アメリカ牛っていうと、牧場で放牧された赤みの牛肉ってイメージがありますが、いまや正反対。狭い飼育場に詰め込まれてろくに動きもせず、(牛にとって)糖質の多すぎるとうもろこしを食べている牛の肉は、牧場育ちに比べて飽和脂肪酸の割合がとても高いとか。しかも病気になりやすいから抗生物質漬けです。飼育場に牛がいーっぱいいる画像は衝撃的でした……もうアメリカ牛食べれないよ。

他にも、農業政策(補助金の出し方とか)やら、コーンシロップ(ブドウ糖液糖など)の問題やら、気になるトピックが満載で、いろいろ書ききれません。とにかく、90分見た後にその何倍も考えさせられる、すっごくお得な映画だと思います。しかもおもしろいところがまたよし!

モンドヴィーノ [DVD]

2009年5月13日水曜日

カーター・ディクスン『ユダの窓』

太った探偵が好きです。……いえ、太ってれば何でもいいわけじゃないんですが、なぜか一番お気に入りの探偵がカーター・ディクスンHM(ヘンリー・メルヴェール卿)とレックス・スタウトネロ・ウルフなのです。どっちも小山タイプですが、実際に会わなければならないとしたら絶対HMの方がいいだろうなあ……ネロ・ウルフは超がつく女性ぎらいだけど、HMはたいていの女性には(実は)やさしいから。

そんなわけで、『ユダの窓』はHMの登場する作品の中でも名作のひとつに入るストーリーです。もちろん、トリックやその解明がよくできているからなのですが、HMが後半になってやっと登場するような作品に比べて、これは最初から最後までHMを堪能できるのもうれしい点なのです。HMは、第1次世界大戦中に英国軍情報部の部長として活躍し、その後もそんなような仕事をしているらしい、太って頭の薄い準男爵。性格は破天荒の一語につきます。貴族とは思えない言葉づかいで、子供みたいなところがあるかと思えば、ほめたりすると腹を立てるというつむじまがりなところが……(もしかして、HMってツンデレ?) 運転させるとなぜ事故を起こさないのかわからないスピード運転をするらしい。
そんなHMですが、実は医者と弁護士の資格を持っていて教養にあふれていたりもします。そんなHMがメイ弁護士っぷりを見せる唯一の作品がこの『ユダの窓』。名なのか、迷なのかは読んでからのお楽しみです。が……今は新刊では手に入らないみたいです。amazonマーケットプレイスを見ると、古書で安く買えそうなのはありがたいけれど。
カーター・ディクスンことディクスン・カーの小説には、登場人物が片っぱしから何か隠していそうな奇妙なそぶりをするのになかなか白状しない(または言おうとすると邪魔が入る)という特徴があって「あやしいのか、単に精神不安定な人なのか」とちょっとイラつくこともあるのですが、『ユダの窓』では、それぞれの奇妙なそぶりがきれいに解明されるところも万人にお勧めできるポイントであります(逆に言えば、よっぽどのカーマニアじゃないととても読めないような作品もあります^^;)。ぜひまた復刊してほしい!

ユダの窓 (ハヤカワ・ミステリ文庫 6-5)

2009年5月10日日曜日

イタリア映画祭の記憶

ちょうどよい機会なので、自分のメモ代わりにも、これまで見たイタリア映画祭上映作品および関連作品を簡単にまとめておきます。

2001
Tu ridi (Paolo e Vittorio Taviani) 笑う男/タヴィアーニ兄弟監督
Radiofreccia(Luciano Ligabue) ラジオフレッチャ/ルチアーノ・リガブーエ監督
La lingua del santo(Carlo Mazzacurati) 聖アントニオと盗人たち/カルロ・マッツァクラーティ監督
Sangue vivo(Edoardo Winspeare) 血の記憶/エドアルド・ウィンスピア監督
第1回。日本イタリア年で「イタリア旅行」というテーマで90年代の映画が並んだ。歌も超かっこいいおやじロック歌手リガブーエ監督の『ラジオフレッチャ』では(後でファンになった)ステファーノ・アッコルシはまだ垢抜けなくてそこがまたよい。『聖アントニオと盗人たち』はイタリア的超美形なのに頼りないファブリツィオ・ペンティヴォリオが最高。『血の記憶』でプーリア州の民俗音楽ピッツィカにはまる。

2002
Fuori dal mondo(Giuseppe Piccioni) もうひとつの世界/ジュゼッペ・ピッチョーニ監督
La via degli angeli(Pupi Avati) 真夏の夜のダンス/プーピ・アヴァーティ監督
La carbonara(Luigi Magni) ラ・カルボナーラ/ルイジ・マーニ監督
Santa Maradona(Marco Ponti) サンタ・マラドーナ/マルコ・ポンティ監督
第2回もテーマは「イタリア旅行」。『もうひとつの世界』でマルゲリータ・ブイを知る。すばらしい。1930年代のボローニャ近郊を舞台にした『真夏の夜のダンス』は山奥から年に1度のダンスパーティーに集まってくる人々の悲喜こもごもが自然に包まれている感じが好きだった。『サンタ・マラドーナ』は映画祭では見なかったが、S・アッコルシが出ているのがわかって後からDVDを購入。若々しい。

2003
Le fate ignoranti(Ferzan Ozpetek) 無邪気な妖精たち/フェルザン・オズペテク監督
L'ora di religione(Marco Bellocchio) 母の微笑/マルコ・ベロッキオ監督
L'imbalsamatore(Matteo Garrone) 剥製師/マッテオ・ガッローネ監督
A cavallo della tigre(Carlo Mazzacurati) 虎をめぐる冒険/カルロ・マッツァクラーティ監督
『無邪気な妖精たち』はゲイ役のS・アッコルシがありえないほど魅力的。出演作をほぼすべて集めたけど、やっぱりこれが最高。M・ブイも出てます。『母の微笑』は宗教というテーマがイタリアらしくベロッキオらしく、難しいけれどおもしろかった。『剥製師』は、好きになれないのに目が離せない感じの登場人物たちで不思議な気分。『虎をめぐる冒険』は『聖アントニオ…』ほどではなかったけど良質の悲喜劇。ペンテヴォーリオがやっぱりいい。

2004
Il cuore altrove(Pupi Avati) 心は彼方に/プーピ・アヴァーティ監督
Il miracolo(Edoardo Winspeare) トニオの奇跡/エドアルド・ウィンスピア監督
La finestra di fronte(Ferzan Ozzpetek)  向かいの窓/フェルザン・オズペテク監督
Un viaggio chiamato amore(Michele Placido) 愛という名の旅/ミケーレ・プラチド監督
Buongiorno, Notte(Marco Bellocchio) 夜よ、こんにちは/マルコ・ベロッキオ監督
『トニオの奇跡』はプーリアで奇跡を起こした少年をめぐる話で、工業都市ターラントと海の風景の対比がよかったけれど音楽が出てこないのがちょっと残念でした。『愛という名の旅』はS・アッコルシが出てるのですが、まあ普通…というか、アッコルシにはゲイ役かだめ男しかないのか? 『夜よ、こんにちは』はモーロ元首相誘拐殺人事件の赤い旅団を扱っています。すごく見たいと思いつつ、なぜかまだ未見。DVDが出ているので、今度見ようっと。

2005
L'amore ritrovato(Carlo Mazzacurati) 愛はふたたび/カルロ・マッツァクラーティ監督
Le conseguenze dell' amore(Paolo Sorrentino) 愛の果てへの旅/パオロ・ソレンティーノ監督
Prendimi (e portami via)(Tonino Zangardi) 私をここから連れ出して/トニーノ・ザンガルディ監督
Ballo a tre passi(Salvatore Mereu) スリー・ステップ・ダンス/サルバトーレ・メレウ監督
Gente di Roma(Ettore Scola) ローマの人々/エットレ・スコラ監督
『愛はふたたび』はS・アッコルシが出ているマッツクラーティ監督作品で本国でヒット……なのに、単なる優柔不断でわがままな男の不倫話で不満。『愛の果てへの旅』の舞台はスイス。謎めいたストーリーに衝撃的なラスト。イタリアっぽくないけど、引かれました。『私をここから連れ出して』は少年とロマの少女の交流が描かれていて、ロマにも興味のある私には色々勉強にもなった一作。『スリー・ステップ・ダンス』はちょっと幻想的で荒々しく美しい。サルディーニャにも行ってみたい(でも正直ちょっとこわい)。『ローマの人々』では、レストランで食事をしながら父親に老人ホームに入るよう説得する息子が妙に印象に残っています。

2006
Mater natura(Massimo Andrei) 母なる自然/マッシモ・アンドレイ監督
La seconda notte di nozze(Pupi Avati) 二度目の結婚/プーピ・アヴァーティ監督
La febbre(Alessandro D'Alatri) マリオの生きる道/アレッサンドロ・ダラートリ監督
Quando sei nato, non puoi piu nasconderti(Marco Tullio Giordana) 13歳の夏に僕は生まれた/マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督
『母なる自然』はナポリを舞台にしたトランスセクシュアルとゲイの映画。イタリア人の肉体の存在感ってやっぱりすごい。『二度目の結婚』のA・アルバネーゼは名演だった。クレモナが舞台の『マリオの生きる道』はおもしろい話でした。なんだか身につまされる。一般公開されてから見た『13歳の夏に……』は少年とルーマニア移民の兄妹のストーリー。移民問題の根の深さが感じ取られて考え込んでしまいました……正解はどこにもない……

2007
Il regista di matrimoni(Marco Bellocchio) 結婚演出家/マルコ・ベロッキオ監督
Nuovomondo(Emanuele Crialese)  新世界/エマヌエーレ・クリアレーゼ監督
L'amico di famiglia(Paolo Sorrentino) 家族の友人/パオロ・ソレンティーノ監督
Il caimano(Nanni Moretti) カイマーノ/ナンニ・モレッティ監督
Romanzo criminale(Michele Placido) 犯罪小説/ミケーレ・プラチド監督
L'orchestra di Piazza Vittorio(Agostino Ferrente) ヴィットリオ広場のオーケストラ/アゴスティーノ・フェッレンテ監督
この年は久しぶりに秀作ばかりで大満足。『新世界』はシチリアから米国に移住する一家の話。とてもおもしろい。その上、シャルロット・ゲンズブールがイギリス人役で出ている。『家族の友人』は主人公ジェレミアがいやなやつなのに見ていると同情してしまう不思議。初めてのモレッティ作品が『カイマーノ』なのはどうなのか。ベルルスコーニ映画のふりをした「映画の映画」でした。『犯罪小説』はイタリア版「仁義なき戦い」。S・アッコルシにはひげは似合わないと思う。実は今年になって見た『ヴィットリオ広場……』は移民オーケストラづくりのドキュメンタリー。

2008
Saturno contro(Ferzan Ozpetek) 対角に土星/フェルザン・オズペテク監督
La ragazza del lago(Andrea Molaioli) 湖のほとりで/アンドレア・モライヨーリ監督
『対角に土星』は久しぶりのオズペテク作品でした。それぞれが孤独をかかえた友のつながり……ものすごく「わかる」テーマで、とても気に入りました。M・ブイとS・アッコルシは夫婦で、やっぱりしっかりものの妻とダメ夫。『湖のほとりで』は北イタリアの緑につつまれた村で起こる殺人事件の話。派手な話ではないけれど、佳作だと思います。夏に一般公開予定。

イタリア映画祭2009

ちょっと間が開いてしまいました。ゴールデンウィークには、有楽町の朝日ホールで毎年のようにイタリア映画祭が開催されます。毎年、上映作品の中から気になるものを選んで見るようにしています。第1回が2001年(日本イタリア年)だったので、もう9年になるんですね。うわー、びっくり。
今年は、GW後半に旅行の予定だったので、1日だけの参加で、2本見ました。

Il divo(Paolo Sorrentino) イル・ディーヴォ/パオロ・ソレンティーノ監督
ソレンティーノ作品は、2005年に『愛の果てへの旅』、2007年に『家族の友人』を見ています。本作は、今のベルルスコーニ首相を軽く超えるほどあやしさ満載の政治家ジュリオ・アンドレオッティ(戦後から90年代までイタリア政界で活躍し、首相を3回つとめた一方で、秘密結社やマフィアとの関連もうわさされた人物)を取り上げた作品でした。監督の名に注目せずに本作を見ることにして、実は来日作品はすべて見ていることに後から気付いて、どうやら自分はソレンティーノ作品が好きらしいと今さら気付いたのでした。本作はこれまでの作品とはちょっと違って、史実に忠実に、かなりドキュメンタリー風に撮られています。でも、特徴的なスタイリッシュなカメラワークは共通しているかな。大きな事件が突然起こるわけでもなく、様々な疑惑が取りざたされるけれども解決もなく、でも目の離せないのめり込んでしまうような映画でした。様々な意味でのアンドレオッティの大きさがよく伝わって、イタリア政治におけるモーロ元首相誘拐殺人事件の傷もよく伝わって、傑作だと思いました。主演のトニ・セルヴィッロも名演でした。
それにしても、イタリア政界って、知れば知るほど奇々怪々。日本の政治家なんてかわいく見えてきます……

Sonetàula(Salvatore Mereu) ソネタウラ―”樹の音”の物語/サルヴァトーレ・メレウ監督
メレウ監督が来日していて、あいさつがありました。メレウ作品は、2005年に『スリー・ステップ・ダンス』が来ています。作品から想像していたよりおしゃれな感じの方でした。本作は第二次世界大戦前後のサルディーニャを舞台に、羊飼いの少年の過酷な運命を語っています。サルディーニャの羊飼いの登場する映画といえばタヴィアーニ兄弟の『パードレ・パドローネ』が有名です。時代もそれに近くて、一種既知の異世界を再体験する感じがありました。ただ、あちらが文蒙の羊飼いが文字を通して広い世界を知っていく成功の物語だとすれば、こちらは厳しい生活の中でひたすら自分をすり減らしていく負の連鎖の物語であり、ラストシーンが一種の救いに見えてしまうのが哀しい。ピクチャレスクな風景の中で続く小さくさりげない人の営みがとても感動的でした。
タヴィアーニ兄弟の『カオス・シチリア物語』から現代イタリア映画にはまったので南イタリアを舞台とした作品を多く見るようにしていますが、サルディーニャもシチリアに似ていて、さらに原始的な部分の残る地域で、とても気になっています。山賊の登場シーンも興味深かったです。冒頭しか登場しないのですが、主人公の父親役がどこかで見たことのある顔……と気になっていたら、なんとクストリッツァの『アンダーグラウンド』でブラッキーを演じていたラザル・リストヴスキでした。言われてみれば~! しかし、なぜサルディーニャにセルヴィアの俳優が……。びっくり。

本当はもう1本、ナポリのカモッラを描いた『ゴモラ』も見たかったのですが、都合が合わず断念しました。来年あたり、一般公開されるといいんだけど……題材的に難しいかな?
今年のイタリア映画祭は全席指定に加え、パスポートなどがなくなったせいかとてもスムーズな運営で、一時期の席取合戦がうそのよう。ただ、その分お祭りっぽさが薄くなったのも否めない。難しいものですね。