2009年3月20日金曜日

クルーガー『二度死んだ少女』

原題"Blood Hollow"。
アメリカ原住民のオブジワ族の血をひく元保安官コークが主人公の小説です。ミステリとしてもそれなりに整っているし、登場するオブジワ族の文化のなんとも魅力的なこと。オブジワ族の魔術師ヘンリー・メルーがすばらしいです。なつかしのカスタネダの著作が思い出される部分も。コークのシリーズはこれが第4作目になるのだけれど、やっぱり順番に読むとより感慨深いものがあります。本作では、オブジワ族の文化に並んで、カトリックの教義もわりと大きく取り上げられています。

さて、本筋とはちょっと離れて思ったこと。
今仕事の関係でいろいろ調べ物をしているのですが、その中で「民主主義国家同士は戦争をしない」という学説を知りました。言いたいことはすなわち「ほら、日本とかも第二次世界大戦後に民主化されて脅威じゃなくなったろ? だから社会主義の国とか独裁政治の国は民主主義にしてやるのがよろしい」っていう、アメリカ合衆国の民主主義の保護者・伝道者としての活動を支持するような言説なわけです。
"その論理はなんか納得いかない "って思うんだけど、反論しても言い方ですり抜けられてしまいそうな気がする微妙な学説です。あ、今思いついたけどインドとパキスタンの小競り合いとかはどうなの? あんなの戦争という規模じゃないってこと?まあ、その辺りは今回言いたいことじゃないので詳しく考えるのは後回しにして、 とにかく

 そんな風に「民主主義」を信奉している国で、
 例えば本書のように、キリスト教的な宗教心の篤さが強く語られる、
 実際にも、宗教的活動が非常に盛んである、

つまり、アメリカ合衆国ってプラグマティズムの国なのに、実は世界一本気で宗教信じてるよね?という、矛盾とも思えるような現象が、なんとも不思議だなあ~と、素朴に感じたわけです。実は以前から思っていることなんですが、また改めて感じられました。でも、その理由はなぜなのか考え出すと大変なのであんまり考えません(爆)

とってもおもしろい小説だったのだけれど、「おもしろかった」と思うのと同時に、 ちょっと違うことを考えさせるものがあり、ちょっと書いてみたくなったのでした。 あ、それがすなわち複合的なおもしろさなのでしょうか。

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二度死んだ少女

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