2009年3月29日日曜日

グランジェ『コウノトリの道』『クリムゾン・リバー』

原題"Le Vol Des Cigognes""Les Rivieres Pourpres"
ルブランに刺激されて、フランスのでっかい話をもっと読みたくなったので、本棚から引っ張り出してきました。ああ、『モンテ・クリスト伯』を読むという手もあったな。今度読もう。

1994年と1998年にフランスで出版されたミステリです。先に読んだのは新しいほうの『クリムゾン・リバー』でした。これが、最初に読んだときはもうびっくり仰天しました。こんなのあるんだーって。こちらは映画にもなっているので、映画も見ました。ラストのほうは気にくわなかったけれど、暴力デカのニエマンスジャン・レノがやっているのはぴったりでしたっけ。でも、アラビアンなカリムも見たかった。
小説にはたまに「これは映像化に適しているなあ」と思うものがあるのですが、グランジェの小説はまさに映画にするしかない、というものばかり。とにかく絵にしたらすごい、と思うシーンがいっぱいあるし、ストーリーの持っていきかたも派手だし(ちなみに、他に「これは映画にするしかないな」と思った小説に『ダ・ヴィンチ・コード』があったりします。好きじゃないけど)。特に『クリムゾン・リバー』は舞台が他の小説ほどあちらこちらに飛ばないので、作りやすさも○。もっとも、映像化に適しているという評価は小説としてのおもしろさとは直行する概念でして、おもしろいものもつまらないものもあります。グランジェの小説は、小説としてもとにかくおもしろいのです。そんなことが!って驚くような事実が現れるんだけど、それがとんでもないのにうそっぽくない。そこがすばらしいです。それにしても、どれも長いんですよね。『クリムゾン・リバー』は四五〇ページを超えてます。しかも、それがほぼたった1日間、足かけ3日のできごとなんだからびっくりです。しかも、その間ニエマンスはまったく寝ない(正確に言えば45分ぐらい仕事中に寝落ちしてますが)。ちゃんと寝ろよ、ニエマンス。

コウノトリの道』のテーマは、ヨーロッパとアフリカを往復する渡り鳥のコウノトリ。のはずなんですが、これがまたとんでもなくでっかい展開になっていきます。同時に主人公のルイ・アンティウォッシュの変わり者ぶりがだんだん明かされていって、その理由がわかっていきます。この小説は舞台がとても広いです。コウノトリは東欧も通るので、ブルガリアのロマなども登場して、そのあたりがまた興味深いです。ロマのごちそうと言われるハリネズミ料理のおいしさが語られるシーンがあって、一度食べてみたいなあ、と思ってしまいました。ジプシー研究者の関口さんも、「ジプシーキャラバンでごちそうになる謎のごった煮がすごくおいしいんだ」と以前言ってらしたので、さらに興味津々。ロマの医者ミラン・ジュリクが出てくるのですが、この人がとってもしぶくていい感じです。実は、本書の中で一番かっこいいのは彼でしょう。

とにかく、分厚さに負けず一気に読めてしまうおもしろさと謎ときのスピード感が好きなら、グランジェの小説はとってもおすすめです。和訳はもう1冊『狼の帝国』が出ています。こちらは主人公が女性で、さらにしぶーい女性医師が出てきて、女性の身としてはうれしくなります。ちょっと話が大きすぎてあれとこれとそれがまとめきれていない感もありますが。とにかく、どの小説も買って、読んで、損はありません。(謎の)知識もいろいろ増えるし。ただし、どれにも痛そうな描写やかなりグロテスクなシーンがたくさん出てくるので、その辺は要注意。こういう本を食事中(一人だとついながら食べしてしまいます)に読めてしまう自分がちょっと心配。

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クリムゾン・リバー (創元推理文庫)
コウノトリの道 (創元推理文庫)
狼の帝国 (創元推理文庫)

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