2009年5月13日水曜日

カーター・ディクスン『ユダの窓』

太った探偵が好きです。……いえ、太ってれば何でもいいわけじゃないんですが、なぜか一番お気に入りの探偵がカーター・ディクスンHM(ヘンリー・メルヴェール卿)とレックス・スタウトネロ・ウルフなのです。どっちも小山タイプですが、実際に会わなければならないとしたら絶対HMの方がいいだろうなあ……ネロ・ウルフは超がつく女性ぎらいだけど、HMはたいていの女性には(実は)やさしいから。

そんなわけで、『ユダの窓』はHMの登場する作品の中でも名作のひとつに入るストーリーです。もちろん、トリックやその解明がよくできているからなのですが、HMが後半になってやっと登場するような作品に比べて、これは最初から最後までHMを堪能できるのもうれしい点なのです。HMは、第1次世界大戦中に英国軍情報部の部長として活躍し、その後もそんなような仕事をしているらしい、太って頭の薄い準男爵。性格は破天荒の一語につきます。貴族とは思えない言葉づかいで、子供みたいなところがあるかと思えば、ほめたりすると腹を立てるというつむじまがりなところが……(もしかして、HMってツンデレ?) 運転させるとなぜ事故を起こさないのかわからないスピード運転をするらしい。
そんなHMですが、実は医者と弁護士の資格を持っていて教養にあふれていたりもします。そんなHMがメイ弁護士っぷりを見せる唯一の作品がこの『ユダの窓』。名なのか、迷なのかは読んでからのお楽しみです。が……今は新刊では手に入らないみたいです。amazonマーケットプレイスを見ると、古書で安く買えそうなのはありがたいけれど。
カーター・ディクスンことディクスン・カーの小説には、登場人物が片っぱしから何か隠していそうな奇妙なそぶりをするのになかなか白状しない(または言おうとすると邪魔が入る)という特徴があって「あやしいのか、単に精神不安定な人なのか」とちょっとイラつくこともあるのですが、『ユダの窓』では、それぞれの奇妙なそぶりがきれいに解明されるところも万人にお勧めできるポイントであります(逆に言えば、よっぽどのカーマニアじゃないととても読めないような作品もあります^^;)。ぜひまた復刊してほしい!

ユダの窓 (ハヤカワ・ミステリ文庫 6-5)

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