2009年5月10日日曜日

イタリア映画祭2009

ちょっと間が開いてしまいました。ゴールデンウィークには、有楽町の朝日ホールで毎年のようにイタリア映画祭が開催されます。毎年、上映作品の中から気になるものを選んで見るようにしています。第1回が2001年(日本イタリア年)だったので、もう9年になるんですね。うわー、びっくり。
今年は、GW後半に旅行の予定だったので、1日だけの参加で、2本見ました。

Il divo(Paolo Sorrentino) イル・ディーヴォ/パオロ・ソレンティーノ監督
ソレンティーノ作品は、2005年に『愛の果てへの旅』、2007年に『家族の友人』を見ています。本作は、今のベルルスコーニ首相を軽く超えるほどあやしさ満載の政治家ジュリオ・アンドレオッティ(戦後から90年代までイタリア政界で活躍し、首相を3回つとめた一方で、秘密結社やマフィアとの関連もうわさされた人物)を取り上げた作品でした。監督の名に注目せずに本作を見ることにして、実は来日作品はすべて見ていることに後から気付いて、どうやら自分はソレンティーノ作品が好きらしいと今さら気付いたのでした。本作はこれまでの作品とはちょっと違って、史実に忠実に、かなりドキュメンタリー風に撮られています。でも、特徴的なスタイリッシュなカメラワークは共通しているかな。大きな事件が突然起こるわけでもなく、様々な疑惑が取りざたされるけれども解決もなく、でも目の離せないのめり込んでしまうような映画でした。様々な意味でのアンドレオッティの大きさがよく伝わって、イタリア政治におけるモーロ元首相誘拐殺人事件の傷もよく伝わって、傑作だと思いました。主演のトニ・セルヴィッロも名演でした。
それにしても、イタリア政界って、知れば知るほど奇々怪々。日本の政治家なんてかわいく見えてきます……

Sonetàula(Salvatore Mereu) ソネタウラ―”樹の音”の物語/サルヴァトーレ・メレウ監督
メレウ監督が来日していて、あいさつがありました。メレウ作品は、2005年に『スリー・ステップ・ダンス』が来ています。作品から想像していたよりおしゃれな感じの方でした。本作は第二次世界大戦前後のサルディーニャを舞台に、羊飼いの少年の過酷な運命を語っています。サルディーニャの羊飼いの登場する映画といえばタヴィアーニ兄弟の『パードレ・パドローネ』が有名です。時代もそれに近くて、一種既知の異世界を再体験する感じがありました。ただ、あちらが文蒙の羊飼いが文字を通して広い世界を知っていく成功の物語だとすれば、こちらは厳しい生活の中でひたすら自分をすり減らしていく負の連鎖の物語であり、ラストシーンが一種の救いに見えてしまうのが哀しい。ピクチャレスクな風景の中で続く小さくさりげない人の営みがとても感動的でした。
タヴィアーニ兄弟の『カオス・シチリア物語』から現代イタリア映画にはまったので南イタリアを舞台とした作品を多く見るようにしていますが、サルディーニャもシチリアに似ていて、さらに原始的な部分の残る地域で、とても気になっています。山賊の登場シーンも興味深かったです。冒頭しか登場しないのですが、主人公の父親役がどこかで見たことのある顔……と気になっていたら、なんとクストリッツァの『アンダーグラウンド』でブラッキーを演じていたラザル・リストヴスキでした。言われてみれば~! しかし、なぜサルディーニャにセルヴィアの俳優が……。びっくり。

本当はもう1本、ナポリのカモッラを描いた『ゴモラ』も見たかったのですが、都合が合わず断念しました。来年あたり、一般公開されるといいんだけど……題材的に難しいかな?
今年のイタリア映画祭は全席指定に加え、パスポートなどがなくなったせいかとてもスムーズな運営で、一時期の席取合戦がうそのよう。ただ、その分お祭りっぽさが薄くなったのも否めない。難しいものですね。

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